[地炉(じろ)]
※囲炉裏のこと
目黒邸の入り口を入った正面に土間があり、その先に地炉があります。ここでは朝からもうもうと囲炉裏に火が焼(く)べられており、開館中はその火が消えることはないのだそうです。本来であれば一日中火を焼べ続けるのが良いらしいのですが、住んでいる訳ではないので物理的に難しいとのことでした。これをするのとしないのとでは、茅葺屋根の持ちに差が出るようです。
薪を使うことで囲炉裏から立ち昇る煙は、火棚(ひだな)を伝って部屋中に拡散されます。煤のコーティングによる防水効果や、木材や茅葺内部に潜む虫を追い出す効果があり、建物の維持には必要不可欠なものです。燻さない茅葺屋根は虫の絶好の住処になるようです。
薪を使う囲炉裏は農家や漁家に見られるもので、木炭を使用する富裕層や商家などでは見られません。
後者の住まいがそもそも瓦葺屋根であるため虫を燻り出すことが不要であること、人が密集した場所に住まいがあるため煙が近隣の迷惑になることも、燃料が違う理由と思われます。
囲炉裏の煙が屋根裏に向かって立ち上って行きます。
目黒邸では、薪を使う囲炉裏と、木炭を使う囲炉裏の双方があります。
初めて薪を焼べている囲炉裏の前に座したのですか、目に煙が染みて己が燻されている感が半端なく、なかなかに大変でした。
薪を焼べる囲炉裏前に座ったことで知ったのですが、時々薪が爆ぜて火の粉が炉の枠を超えて飛んでくるのです。
囲炉裏の周囲に莚(むしろ)が敷いてあるのですが、そこに着地しまくっていました。
「燃え広がらないのですか?」と訊いたら、「これは藁ではなく、菅(スゲ)でできているんです」とのこと。
後で調べたところによると、ギュッと編まれて圧縮したスゲは燃えにくい性質があるようです(稲わらなども同様)。表面は焦げても炭となって炭化層を形成するため燃え広がりません。
木が簡単には燃えないのと同じ理由のようですね。
スゲ(菅)の筵(むしろ)
※スゲの場合、ムシロの漢字は竹冠なんですね
スゲ属は多年生の草本。
湿ったところに生育するものが多い。
大型種の葉は笠や蓑などに用いられました。
ここに敷かれた筵は厚く、目が揃っていて綺麗。(端の処理が特に)
しかしこれを作った職人さんは既に他界されており、
今では作れる人が居ないそうです。
焦げ跡が残っていますが、焦げ跡は点でしかありません。
むしろ機(むしろばた)@守門民俗文化財館
これは藁を編んでいるのかな?
茶の間にある囲炉裏には木炭を入れていたと思われます。
畳敷きですしね。
奥座敷にあった「くり貫き火鉢」。
奥の寝間にあった「櫓炬燵(やぐらこたつ)」。
木炭には白炭と黒炭の二種類あります。@守門民俗文化財館
白炭は1000度ほどの高温で焼成し、
窯の外へ掻き出して素灰を掛けて急冷・消火して作ります。
黒炭は400~700度の低温で炭焼され、密閉鎮火して作ります。
扱いが難しいのが白炭。
千鳥破風(ちどりはふ)から煙がもくもくと流れ出て行きます。
菅筵(すがむしろ)は座ってみて分かったのですが、厚みがあり、藁の莚とは違ってチクチクしません。肌触りがめっちゃ良いです。これを欲しがる人も多いそうですが、作り手が居らず、今は手に入らないため入手は不可能。
そう言われちゃうと、なんだか欲しくなっちゃうんだな。 菅笠(すげがさ)だったら富山県の伝統工芸品で、今も作っている人が居るのだけれど。
と思ったら、大阪の深江地区(大阪市東成区)で菅細工(すげざいく)が大阪府知事指定伝統工芸品として保存されていて、円座などを今も作っているようです。円座も魅力的ですが、お高いんでしょうなぁ。
【重要文化財 目黒邸】
新潟県魚沼市須原890
開館時間 9:00~16:00
休館日:年末年始
目黒邸資料館入館料:200円
(JR只見線 越後須原駅から徒歩5分)
※JR只見線の駅にはコインロッカーがありません
https://www.city.uonuma.niigata.jp/megurotei/