国の重要文化財に指定されています。
国指定重要文化財の「松城家住宅」。
その今年最後の見学日が2016年8月21日でした。
実は今年だけでなく、2022年まで大規模改修をするため、
6年もの長い期間見学ができなくなります。
大規模改修は初めてで、
約140年間で老朽化した建物の保全と耐震化がなされます。
主屋は半解体、北土蔵や門などは全解体するそうな。
[門及び塀]
庭門及び塀 石造、折曲り延長8.0m
重文指定年月日:2006.07.05
門柱は伊豆石(凝灰岩)です。
既に工事用具などが運び込まれていました。
[東土蔵]
土蔵造、建築面積39.66平方メートル、二階建、西面庇付、桟瓦葺
重文指定年月日:2006.07.05
劣化の激しい蔵の外壁と屋根。
屋根には鬱蒼と蔦が生い茂っています。
同じく蔦が生い茂る蔵の外壁。
外壁の崩壊を思うと必ず、「アッシャー家の崩壊」を思い出します。
[ミセ]
木造、建築面積32.23平方メートル、二階建、桟瓦葺
西面主屋に接続
重文指定年月日:2006.07.05
ミセの横にある門から庭に向かって見たところ。
改修前に不要な家具類を搬出したあとなのか無造作に詰まれていました。
※奥には入れず
[松城家住宅 主屋]
木造、建築面積266.76平方メートル、二階建、桟瓦葺
重文指定年月日:2006.07.05
外側の撮影は許可されていますが、内部ではカメラ等の使用は不可。
そんな中、唯一「入江長八」の鏝絵をカメラに収められるのが、
この主屋土間入口天井部分のランプ釣元飾りです。
[牡丹]
牡丹の鏝絵には落款があり、入江長八の「天裕之章」という号が見られます。
伊豆石の門
伊豆石の塀の奥に、破風の庇がある式台構えの玄関があります。
二階外壁は石積み風に仕上げた白漆喰塗り。
洋風建築を模した円柱も白漆喰塗り。
その隙間から、二階のポルトガル製手描きの天井紙が見えます。
この天井紙が二階の全ての部屋に貼られていました。
起り破風の庇のある式台構えの玄関。
飾り板金も凝っています。
本玄関の彫刻は、彫刻師 石田半兵衛の作と伝えられています。
立派な式台構えの玄関。
兎の毛通しは鶴です。
欄間は亀。
めちゃくちゃ人相の悪い、凶悪そうな亀です。
和洋融合の独特の外観。
以前はここに鎖樋があったと思われます。
縁の下。
ここも漆喰塗りという・・・マジか。
[上段の間]
・・・だった気がする。
西面の2階に、洋風の窓が3カ所見えます。
ここは必見!
本物の窓は1カ所だけで、他は漆喰鏝絵で描かれたもの。
近寄ってみると・・・
これが本物の窓。
半円形の青空を映したような部分もガラスではなく漆喰造り!
破風部には群青色の天然顔料が青壁として塗られています。
石積み風の壁も左官技術です。
入江長八の名工振りがよく分かります。
西側の奥にあるのは文庫蔵。
謎の遺構。
ここには何が建っていたんだろう?
調べてみたら、
ここには囲炉裏の煙出しのための煙出し越屋根が設置されていたそうです。
右側の漆喰塗りの壁に注目。
仕上げ方が面白い。
凄く綺麗な海鼠壁。
既に足場が組まれていました。
[文庫蔵]
土蔵造、建築面積16.52平方メートル、二階建、東面蔵前附属、桟瓦葺
蔵前南面主屋に接続
重文指定年月日:2006.07.05
文庫蔵の屋根部分。
[北土蔵]
土蔵造、建築面積32.23平方メートル、二階建、桟瓦葺
重文指定年月日:2006.07.05
写真には無い、入江長八の鏝絵が屋内にはあるのですが、
それらのほぼ全てが素晴らしく、一見の価値大有りです。
中にはラクガキされているものもあり、
それをした人物に呪いを掛けそうになりました。
初めて入江長八の鏝絵を見ましたが、本当に素晴らしいです。
芸術です、芸術。
震災や空襲で東京にほぼ現存していないのが惜しい!
天才と言われる人物の技に触れ、本当にゾクゾクしました。
長年、見たいと切望していたことが叶い、感無量です。
6年後にどのような補修がなされて一般に公開されるのかは不明ですが、
それも是非見てみたいと思っています。
しかし、建築当初のままの技に接することが出来た今回は、
ワタクシにとって、大変貴重な記憶に残るものとなりました。
最後に見られて本当に良かったです。
【松城家住宅】
静岡県沼津市戸田72
公開日時:第一及び第三日曜
※2022年3月まで修復工事