天保年間(1830年~1844年)に建てられ、安政大地震でも倒壊しなかったという東海道十五番目の宿場町「蒲原」の上旅籠(じょうはたご)和泉屋。
現在は、左側4間が個人の住宅、右側2間弱がお休み処として公開されています。お休み処はNPO法人により、藍染・草木染・機織・銀細工・クレイフラワーなどのイベントも行われているようです。
お休み処は伝承によると天保年間に建てられたもので、江戸時代には本陣の向かいの旅籠「和泉屋」として利用されていました。現在でも看板かけや2階の手すりは天保年間当時のままのもの。江戸時代の雰囲気を感じさせる建物です。
平成18年に国の登録有形文化財に指定されました。出典:https://www.city.shizuoka.lg.jp/s3478/s005265.html
お休み処ならば内部が見学できるだろうと思っていたのですが、期せずしてその隣の個人宅になっている建物の一部を見学することになりました。
建物の外観を見ていたら「寄っていきませんか?」と中から声をかけて頂いたからです。
こちらは「鈴木家住宅店舗兼主屋」として国登録有形文化財に指定されています。
個人宅との認識があったので声掛けの意味が一瞬分からなかったのですが、声掛けの理由を聞こうと近付いたところ中に入るよう促され、すぐに建物について説明し始めてくださいました。
なんというか、とても驚きました。
調べてみたら、つい最近まで煙草屋を商っておられたようです。
ワタクシよりも年上の娘さんから説明を受けていたのですが、
奥から娘さんのお父さんが出てこられてからはお二方による二重音声で説明を受けました。
宮大工が建てたという建物で、こんなところにその片鱗が見られます。
説明書きが貼ってあるのだけれど、読んでいる暇がない。
かなり立派な梁なので、二階でワタクシがどすどす歩いても大丈夫そうです。
家紋が入った漆喰飾りにお父さんがランプを付けたんだとか。
三つ藤巴紋入りの漆喰飾りは神奈川から持ってきた人が居ると仰っていたような…。
文化財プレートが置いてあるなと思っていたら、
お父さんから「持ってみて」と渡されました。
初めて文化財プレートを持ったよ!
ずっしりと重い! いろんな意味で重い!
看板などが置いてあるところに和泉屋(旅籠)の文字が見えます。
近代に作られた灯篭看板の上の部分かな?
奥から取り出したという蒲原塗(古代塗)のお重やお盆が展示してありました。
こちらは煙草屋時代のカウンター。
側面がタイル張りになっています。
お父さんがベンチを避けてくれました。
外から撮った方が良いということで開口部も開けてくれたりもして。
モダンな意匠のタイル張りですねぇ。
これまた最近見つけたという木札も取り出して持ってきてくれました。
昔の木札だそうで、お言葉に甘えて撮らせて頂きました。
「蒲原の職人が東京タワーを塗った」と娘さんが仰っていましたが、調べてみると清水区蒲原(旧蒲原町)は「鋼橋塗装発祥の地」といわれ、鉄塔の塗装を専門とする鋼橋塗装の職人を多く輩出した地なんだとか。
ここで文化財(建造物)の課題について考えさせられることになりました。
住み続ける労力とでも申しましょうか。
三和土からの臭気とカビについての悩みも伺ったのですが、回答できる知識が無かったため、請われた訳ではないけれど課題として持ち帰り、知り合いの専門家たちに訊いてみようと思っています。
フィードバックできるかなぁ。
体感的には長時間滞在させて頂いたため、蒲原といえばココというほど記憶に強く刻まれました。
いつか再訪したいと思っています。
その頃には文化財プレートはどこかに嵌め込まれているかもなぁ。
皆さん、どうぞお元気で!
【鈴木家住宅店舗兼主屋(旅籠和泉屋)】注:左側は通常非公開
【お休み処(旅籠和泉屋)】注:右側の暖簾がかかった間口分のみ
静岡県静岡市清水区蒲原三丁目25-3
開館時間 [3月~10月]9:30~16:30,[11月~2月]9:30~16:00
休館日:月曜、祝日の翌平日、年末年始(12月26日~1月5日)
入館料:無料