ヤエヤマブキ

先日、バス停でバスを待っていたとき、

前に並んでいた方が「ちょっと…」という雰囲気の中年男性で、

独り言を呟きつつベンチに座ったり立ったりを繰り返すもんで、

「絡まれたくないなぁ…」

と内心思いつつ読書をしておりました。

その男性の前に立つ若い女性も引き気味の雰囲気で、

男性が時々彼女の近くにある時刻表を見に行くもんだから、

できるだけ気配を消そうとしているのがよく分かる。

「絡まれたくないなぁ…」と思いつつも読書に没頭していたら、

数分後に「すみません」と彼に背後から声を掛けられました。

なぜ背後!?

と、一瞬ギョッとしたのですが、

「はい?」と振り返ってみたら、

「背中に蜂が居るので取りましょうか?」と訊かれました。

そういえばさっき、黒い中型の蜂(または蠅)が飛んでいたなぁ~

と認識していたので、そういうこともあるだろうと思い、

「お願いできますか?」と声を掛けたところ、

背中に居るらしき蜂を摘まむようにして取り去ろうとなさる。

一度で取れなかったのか、

最後はお尻を払うように叩き落していました。

下を見てもそれらしき虫は居なかったので、

飛び去ったのかもしれませんが、

彼の目を見て

「ご丁寧にどうもありがとうございました」

とお礼を伝えました。

ちょっと、たじろいで居られたので、

そんな丁寧にお礼を言われるとは思っていなかったらしい。

そうこうしているうちにバスが到着し、

じっとこちらを見ている彼に再度

「ありがとうございました」と礼を言ったところで

"うむ。"という声が当てられそうな無言の強い頷きを返されました。

背中を向けたその姿に「礼が通じる人で良かった」と思いつつも、

顎マスクのままバス車内へ乗り込んでいく男性を見て、

「運転手さんはどう対応するんだろう?」と疑問が湧きました。

結論としては、何も言われてませんでしたけど。

初見の「ちょっと…」という雰囲気はそのままだったのですが、

「今日は良いことしたなぁ」という達成感が彼を満足させたのか、

バス車内では静かに座って居られました。

一日一善。

誰かに感謝される「善」は、自分を幸せにするものかもしれない。

男性を見て、そう、しみじみ思った出来事でした。

ちなみにワタクシのPCで「いちにちいちぜん」と入力すると

「一日一膳」と出てしまうのは

生活習慣についての注意喚起なんですかね…。




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