利根川は氾濫しまくる川として有名ですが、上流(群馬県)で止めるのが下流の地域(東京都)にとっては、行為髄対策費用の点でも最も効果的だと言われています。
利根川水系の吾妻川(あがつまがわ)に建設中の八ッ場ダム(やんばだむ)は、治水・利水・発電の目的を持つ多目的ダムです。
ちなみに「八ッ場(やんば)」という名称は、ダムサイトの直上流に左支川として流入する小さな沢の名に由来します。
昭和27年に「利根川改定改修計画」の一環として調査に着手し、一時中断を経て昭和42年に実施計画調査を開始。昭和45年から建設に移行しました。
ダムサイトは当初国指定名勝で天然記念物にしていされている「吾妻峡」のほぼ中央部にありましたが、景観を最大限に残すため、昭和48年に約600m上流の現ダムサイトに変更されました。吾妻峡のうちでも最も観光客が訪れる鹿飛橋付近は手を加えられていません。
川原湯温泉の貴重な自然湧出の源泉がダムに沈むことになることもあり、「首都圏に住む人々のために、水没地に住む住民が犠牲になることには断固反対する」という反対運動が長らく続きました。
しかし、旧来の国道145号は土砂災害の危険性から吾妻峡付近が連続雨量120 mmで通行止めとなってしまうため、八ッ場バイパスとJR吾妻線の付替線についてはトンネル区間が増えて移動時間短縮や災害対応の面での改善も見込め、ダムの付帯工事として期待する声もありました。
2009年、民主党のマニフェストによりダム工事が中止。これは地元住民との話し合いもなく、いきなりの報道発表でした。新政権発足に伴う国の突然の方向転換に対し、永年にわたる国家政策との対立の末に苦渋の判断を下して代替地転居と事業執行を待つばかりとなっていた関係者の反発はかなり大きく、共同事業者である東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県の各都県知事からも同様に建設中止に対する批判や、中止の際の負担金返却要求の声が上がりました。
最終的には2015年にダム本体工事開始。2019年度中には完成する予定となっています。
1967着手・2019竣工予定
水没総面積:316ha、水没戸数:340戸、水没農地面積:48ha
2015年度完成予定でしたが、2020年(2019年度)完成に延長されました。
[非常用洪水吐き設備]
ここにゲートが付きます。
[常用洪水吐き設備]
左側の突出した部分は、選択取水設備。
コンクリート打設方法は、巡航RCD工法から拡張レヤ工法に移行。
各所に設置さている案内板を見れば、工事の推移が推察できますね。
この日は、様々な地点からダム本体を眺めておりました。
打設を点検していると思われる作業ゴンドラ。
右側から徐々に撤去されつつある足場。
日本に数台しかない巨大なクローラクレーン。
これは茨城県の石下から来ているっぽい。
ダムの周囲には眺望スポットが設置されていました。
生コン工場があった場所はダム管理事務所になるようです。
プラントの跡が残っていました。
ダム堤頂は標高586m。
地すべり多発地帯であるがゆえの付帯工事の多さが、
事業費増額の一大要因となっています。
30kmあまり離れた場所にあるのが活火山である浅間山。
ダムサイトの地盤も火山層で脆弱だといわれています。
[八ッ場大橋(湖面1号橋)]
八ッ場ダム工事の象徴となった橋。
1回目20,000円でバンジージャンプ(八ッ場バンジー)ができます。
ダム完成前の2019年までの限定企画だそうです。
ダム湖面はブルーの位置まで到達するらしい。
吾妻川に流れ込む水流が滝として見られました。
[不動大橋(湖面2号橋)]
全長590.0m
鋼・コンクリート複合トラス・エクストラドーズド橋
鳩山由紀夫内閣により八ッ場ダムの建設中止が打ち出され、
マスコミに象徴的な施設として取り上げられた。
その後、紆余曲折を経て橋自体の建設は続行され完成した。
平成22年度土木学会田中賞(作品部門)受賞。
水質があまり良くないとされていた吾妻川。
この一帯がダム湖の下に沈むことになります。
旧・JR吾妻線の鉄橋。
線路はともかく、枕木は要・全撤去。
ちまちまと撤去するのは大変そうです。
(撤去した枕木が左側に積まれています)
「やんば1万本桜プロジェクト」により植えられた桜に実が付いていました。
また訪れたくなるような「水と桜の郷」での賑わいのまちづくりをめざして桜を植える、というのが「やんば1万本桜プロジェクト」です。良い試みだなぁと思ったので、募金させて頂きました。ここで咲く桜の花の一助になればと思っています。
国土交通省が進めるインフラツーリズム。
外国人観光客がこの地を訪れる日も近いかもしれませんね。
この日貰ったダムカード。
【八ッ場ダム(やんばだむ)】
群馬県吾妻郡長野原町大字川原畑
型式:重力式コンクリート
総貯水容量/有効貯水容量:107500千m3/90000千m3
本体施工者:清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステム