口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)とは、先天性異常の一つ。


原因は特定できておらず、発生率は400~600人に1人程度と言われています。


現在では治療法が確立しているため外科的治療が可能で、


整形手術並に治療痕も目立たなくなるとされています。


その口唇口蓋裂に関する話をネットで読んで、今回、とても考えさせられました。


読売新聞(ヨミドクター)11/5(日) 7:10配信

産科から小児外科に連絡が来ました。先天性食道閉鎖症の赤ちゃんが生まれたのです。
食道閉鎖とは文字通り食道が途中で閉じている先天奇形です。
当然のことながら、ミルクは一滴も飲めませんから、生まれてすぐに手術をする必要があります。
食道は胸の中にありますので、赤ちゃんの胸を開く、難易度の高い手術です。
しかし赤ちゃんの奇形は食道閉鎖だけではありませんでした。口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)という奇形があったのです。

口唇裂(こうしんれつ)とは上唇が鼻まで裂けていることです。
口蓋裂(こうがいれつ)とは口腔と鼻腔を隔てている上あごが裂けていて、口と鼻の中がつながっている状態です。
口唇口蓋裂は、形成外科の先生が何度か手術をすることで、最終的には機能だけでなく、美容の面でもきれいに治すことができます。

私は赤ちゃんの家族に食道閉鎖の説明をし、手術承諾書をもらおうとしました。
ところが、家族は手術を拒否しました。赤ちゃんの顔を受け入れられないと言うのです。
私は驚き慌てて、どうしても手術が必要なこと、時間の猶予がないことを懸命に説明しました。
ところが家族の態度は頑として変わりません。
何とかしないと大変なことになります。とにかく時間がない。産科の先生たちを交えて繰り返し説得しても、効果はありませんでした。
私は最後の手段として、児童相談所に通報しました。

《中略》

児相の職員と赤ちゃんの家族で話し合いがもたれました。
私はその話し合いが終わるのを、ジリジリしながら会議室の前で待ちました。
話し合いは不調に終わりました。児相の説得も失敗したのです。

では、「親権の制限はできますか」と職員に尋ねると、彼らは首を横に振って「あとは先生たちで解決してください」と言って病院を去りました。
ここから先、何ひとつ話は進展しませんでした。
赤ちゃんには点滴が入れられていましたから、最低限の水分は体内に入ります。しかし、ミルクを一滴も飲んでいませんから、日ごとに赤ちゃんの体は衰えていきます。
やがて、家族は面会にも姿を現さなくなりました。

《中略》

もうあとは、餓死するだけです。
小児外科と産科で話し合い、結局赤ちゃんは産科の新生児室で診ることになりました。
したがって、私は直接赤ちゃんの最後の日々を目にしていません。のちに聞いた話では、一人の産科医が、時間さえあれば赤ちゃんのそばに寄り添っていたそうです。

《中略》

今になって思います。もっと別な方法はなかったのだろうかと。たとえば、障害とともに生きている子どもとか、先天性の病気を治して生きている子どもやその親たちを実際に見てもらえば、赤ちゃんの家族も手術を受けさせる気になったのではないか。
この赤ちゃんの一件は、私の心の中にずっと暗い影を落としています。
生涯忘れることはないでしょう。

小児外科医 松永正訓 氏談



一年近くもの長い月日母体で育み、


期待と希望に溢れる気持ちで産まれてきた子を初めて見た時、


その子が口唇口蓋裂だったら、さぞかしショックを受けるのだろうと推察します。


リセットしたいと思うことも理解できる。


ワタクシも同類症状だったゆえ、こういう運命も有り得たのだと思うと、


自分は大変恵まれた人生だったと深く感謝する次第です。


古い考えが支配する昭和時代ゆえの葛藤もあったと思うけれど、


思い留まり、新生児がこれから歩む未来に覚悟を決めてくれた母には感謝しています。


実はワタクシ、かなり面白い人生だと思うんですよ。


四十数年生きていますが、未だに飽きないですし、自分にわくわくしますし。


煮ても焼いても食えない性格という自覚はあるし、未だに失敗し続けているものの、


不思議と自分を諦めないタイプ。


いずれ、ちゃんと出来るようになると信じているから、


グダグダな部分があっても生きていられるんでしょうな。


どうしようもない子供時代と、失敗だらけの学生時代でしたが、


諦めないでいてくれた母に、いつかは何かを返せたらと思っています。


生涯独身の予定なので、血は残せないけれど、


死ぬときまでに「何か」を残せたら、この人生は善き哉と言え、


それが「返し」になるのではないかと考えています。


日々、「真っ当」が変わる時代にあって、正しい生き方は出来そうに無いけれど、


なるべく世の中の流れに浮かんでいられる木の葉でありたいと思います。


整形手術の技が進歩している現代にあって、見た目は変えられると思います。


産まれた子が口唇口蓋裂であっても、


その子の人生は楽しいものであるかもしれません。


二十一世紀の医療を信じてみても良いのではないかしら?


と、1億2672万人のうちの一人であるワタクシなんぞは思うわけです。


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