岸信介元首相の別邸「東山旧岸邸」が御殿場にあります。
簡単に言えば、とらや工房の隣の敷地です。
1969年(昭和44年)竣工のこの家は、
4代目歌舞伎座(2010年取り壊し)や東京都世田谷区の五島美術館、
大阪北区の大阪ロイヤルホテル、京都岡崎つる家、成田山新勝寺本堂、
東京都千代田区にある村上開新堂などを手掛けた、
近代数奇屋建築の草分けとして有名な建築家、吉田五十八の設計です。
この家には90歳で他界するまで岸元首相が住んでいましたが、
その後、人に貸し、それ以降は空き家のまま放置されていましたが、
2003年(平成15年)に岸元首相の長女・安倍洋子さん(現・安倍首相の母)から
御殿場市に寄贈されました。
数十年後には文化財に指定されちゃったりするかも。
タイミングが合えば一時間に一本出ているバスでも辿りつけますが、
今回は御殿場駅からタクシーを利用しました。
運賃はだいたい1,200円(15分程度)です。
玄関ロビーでDVDにて見どころなどが放映されているので、
それを観てから、ボランティアガイドの方の丁寧な案内で見学がスタートしました。
玄関ホールにある家具も、
この家の設計者・吉田五十八のデザインだそうです。
テーブルも椅子も、脚が竹です。
玄関ロビーの天井は竹を模した塩ビシートが貼られています。
中庭にはアルミ製のブラインドが掛かっています。
※庭側に設置されています
[書斎兼応接間]
造り付けの家具に囲まれた北向きの書斎は10畳あるそうです。
奥が和室。
[和室]
欄間が吹き抜けになっています。
北側の廊下と部屋の間にはガラスが填まっていました。
和室北側にある窓はクレセント錠ではなく落とし錠になっています。
セントラルヒーティングになっており、
ラジエーターはどこの部屋でも隠されているようです。
ヒーターの目隠し兼吹き出し口として
地袋がステンレス(?)の網戸になっています。
和室から見た居間の外構部。
[居間]
サッシ部分の障子は雪見障子になっています。
障子、ガラス、雨戸と、幾重にも重なっているため、
サッシのレールはかなりの幅になっています。
食堂前のノムラモミジ。
[居間と食堂]
随所に近代的な建材が使われています。
※壁紙は張替え済み
[食堂]
正面は蒔絵です。
庭から見た居間と食堂。
食堂の上の二階部分は、昔は富士山が見えた窓があります。
※二階は非公開
張り出した二階部分。
その下はキッチンと女中部屋になっています。
庭には富士山の湧き水が流れ込む池があります。
池の下に敷かれた小石が見えるほどの透明度。
池に流れ込む水は瀧のように石を伝い落ちています。
伊藤博文から贈られたという石灯籠。
池側から食堂前に植えられたノムラモミジを眺める。
池のそばにはキノコが生えていました。
階段下には模型がありました。
パンフレットの表紙写真にも使われている階段。
[台所]
女中さんは住み込みが一人と、通いで二人居たそうです。
呼び出しの表示板。
呼び出しがあると光ります。
(実演していただきました)
ポンプなどのスイッチ類もキッチンにありました。
御殿場市に寄贈される際、家具類もそのまま寄贈されているため、
当時の住まい方が伺えます。
住まう人が公人である場合、生活が垣間見えるのは興味深いですね。
蛇足ですが、隣接するゴルフ場は富士カントリー倶楽部で、
そのクラブハウスは、登録有形文化財(建造物)に指定されています。
アントニン ・ レーモンドの設計なので、大変興味深かったのですが、
ちょっと時間が足りませんでした。
次回はぜひ、そちらを見学したいと思います。
【東山旧岸邸】
静岡県御殿場市東山1082-1
開館時間[4月~9月]10:00-18:00, [10月~3月] 10:00-17:00
休館日:火曜(祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日
入館料:300円