
[金鈴荘(きんれいそう)]
建設時期:明治時代前期
木造2階建、寄棟桟瓦葺、土蔵造
栃木県指定有形文化財(建造物)
明治中期に岡部家の3代目で
岡部呉服店の2代目である岡部久四郎が建てたのが「金鈴荘」。
長年、建材を収集し、
出入りの大工や指物師などの職人を東京3年間で修業させ、
約10年の歳月を費やして建てています。
「床の間」の全てで紫檀・黒檀・鉄刀木(たがやさん)の唐銘木が使用されており、
室内を飾る書画骨董類は、栃木県に縁のある作者のものが殆ど。
【掛軸、額】
真岡出身の矢橋天籟(やばしてんらい)
黒磯出身の高久靄崖(たかくあいがい)
【襖絵山水画】
佐竹永陵(さたけえいりょう)
【天袋、地袋絵や金屏風等】
宇都宮藩家老の県六石(あがたりくせき)
藤田素堂(ふじたそどう)
など、文化財として価値あるものが数多く飾られています。
また、有島武郎の小説『或る女』の主人公・早月葉子のモデルといわれている
国木田独歩の最初の妻・佐々城信子が後年暮らした所です。
その後、昭和63年6月まで割烹料理店「金鈴荘」として利用され、
同年8月に真岡市が借り受け、平成13年1月に岡部呉服店から真岡市に寄付され、
現在は真岡市が管理しています。

昭和27年までは岡部家の別荘として接待や呉服の展示会場として使用されていました。

東日本大震災で罹災し、約2年間休館して復旧工事を行っていたそうです。

平日はこの門が閉まっているみたいですね。


海鼠壁(なまこかべ)仕上。
しかも黒漆喰塗り。先の震災で外壁が剥落し、これは修復したものらしいです。
左官職人が鏝でこれを造るとなると、数年掛かるので、
型で造ったものを貼っているっぽい。


中は蔵ではなく、部屋になっています。
防火のため土蔵造りなので、庭に面している箇所以外を漆喰の外壁が覆っています。

石塀の内側に板塀があります。


[磯山石の塀]
現在は生産されていないそうです。
同じ石材が敷石としても使われています。

庭も見学可能ですが、先ずは玄関から内部へ。
見学は無料です。


屋根の意匠も凝っていますね。
でも影盛りは控えめかも。

[玄関]


照明器具は昭和時代のものらしい。

一階の回り廊下。


窓ガラスは当時のものも残っているようです。
これだけのガラスを填めるとなると、かなりの金額になったでしょうねぇ。


手前の格子っぽいものは、耐震改修で追加したもの。

銘木の「紫檀」が使われており、説明もありました。


同じく銘木の「黒檀」。
これは床柱。


唐木の「鉄刀木」。
この「紫檀」「黒檀」「鉄刀木」の3つは、
普請道楽のお宅を見学すると
「ドヤっ」て感じに説明書きがされていたりします。
レアな銘木として真っ先に覚える呪文のようなものって気がします。

掛け軸などが多くて、撮影できる箇所が少ないかも。
これは一階の一番奥の和室です。地袋と天袋襖の金箔の色が違う理由は、
料亭時代に上のみ使って、下は蔵に仕舞っていたかららしいです。


この下の木材も「紫檀」らしいのですが・・・マジで!?


襖紙も見事です。

庭に面していない方の廊下。
天井が高いんですよ。


ここが佐々城信子さんが使っていた和室。

料亭時代に造られたトイレ。


畳が敷かれているってことは、ここで身繕いをしたのでしょうかね。

二階の襖の引手。

一階の佐々城信子さんの部屋の引手だったと思う。

二階の部屋の引手。
これが一番凝っていますね。

使われていない階段。
かなり急で、幅も狭いです。

唯一の板張りの部屋。
これも料亭時代に板張りにしたそうです。
芸妓さんが踊るためらしいですね。

二階の回り廊下にはガラス戸が付けられていますが、
建築当初は雨さらしだったそうです。

長い廊下をめぐる一本杉。
日光杉らしいです。


庭から見るとこんな感じ。


これほど長い杉ですが、太さはほぼ均一っぽいです。

昔、店があった側の扉は、モロ、蔵の扉になっていて、
その内扉は片面だけガラス張りでした。


ガラスは模様入りですが、割れたのか、違う模様のものが填まっていました。



庭から見た建物。

よく見ると、一階と二階のガラスの大きさが違いますね。


一階の方が古いってのは、板ガラスのサイズ的にもそうなんだろうと思います。


二階は大きな板ガラス。

縁の下にも磯山石らしきものが見えますね。



屋根瓦ってホント綺麗ですよねぇ。
最近、なんだか異様にこういうのを見るとトキメキます。


三つ巴の家紋っぽいんですけど、中央にグシャグシャした何かが見えますよね。

この角度から見てもカッコイイですね。
ちなみに右手側がトイレの部屋です。

建物の裏側。
濠があり、石垣も磯山石で組んでいるみたいです。

裏側から見ると非公開部分があることに気付きます。


漆喰保護のために外壁をトタンで覆っているんですかね。



ここは台所なのかな?


屋根を支えるためか補強がされているっぽい。

その奥は昔からある厠でしょうか。


二階の銅板の雨戸がカッコイイです。

童謡『鯉のぼり』の歌にある“甍の波と雲の波”というフレーズは、
屋根瓦の波の形をうたったものですが、
晴天の日にこういう屋根を見ると、その歌を思い出します。

太い樹が意外とないんですよねぇ。
何故だろう?

磯山石の塀は真岡市登録文化財に登録(平成13年2月28日)されています。

石に生えている植物を抜きたい欲求にかられるのはワタクシだけでしょうか?

これ欲しいかも~と思った灯篭。
建物に興味のない方でも、2階の矢橋天籟の額は必見です。
『百鬼夜行図』というのがそれで、正直、お金持ちだったら欲しいです。
レプリカでもいいから欲しいなぁ。
また、あの絵を観るためだけに出かけようと思っているほどです。
あれは美術館にあるレベルの作品だと思うんだけどなぁ。
金鈴荘で検索していて偶然お邪魔しました。
金鈴荘の裏側の真ん中の出っ張ったところは浴室だったと記憶しています。
浴槽は大理石、床と腰壁が磯山石、なぜかシャワー付混合栓も付いていますw
割烹料亭だった当時の厨房は金鈴荘の西側に増築されていた平屋の建物でしたがその部分は文化財指定が無く取壊されて木綿会館が建てられています。
さらに道路側には物産会館と呼ばれた古い建物がありましたが、震災で被害が大きく取壊され駐車場に。
その後はす向かいに記念館などが整備されるに至ります。