
【旧常田館製糸場施設】
旧常田館製糸場施設は、岡谷出身の実業家笠原房吉が明治33年に創業した機械製糸工場で、現在は主にスチロール製品を製造する。工場内には創業時から大正時代にかけて建設された繭倉庫群を中心に、製糸場時代の諸施設が残される。三階繭倉庫と五階繭倉庫は、多窓式と呼ばれる自然乾燥を前提とした繭倉庫の形式になる。一方、四階繭倉庫と五階鉄筋倉庫は密閉式の繭倉庫で、大正時代以降、乾燥機の発達により通風による乾燥が必要なくなったことを物語る。旧常田館製糸場施設は、長野県で発展した多層の木造繭倉庫群を有する近代機械製糸工場の遺構として貴重であるとともに、わが国の製糸業の中心地の一つであった長野県の近代化を示す施設として高い価値が認められる。
国指定重要文化財がこれほど集中しているのは、
上田市内ではここだけだと思われます。
それが、笠原工業株式会社内にある『旧常田館製糸場施設』。
国指定重要文化財7棟、経済産業省近代化産業遺産群、
上田市文化財に指定されています。
外観の見学しかできないと思いつつ向かったのですが、
この日は内部の見学が可能だとのことで、受付で記名し受付完了。
その後は自由に見学することが出来ました。
先ずは鉄筋コンクリート造の重要文化財からスタートし、
その後、三階繭倉庫、五階繭倉庫に移動しました。
実は大人になってある日イキナリ高所恐怖症になったワタクシ。
終始、太ももがビリビリした状態のままへっぴり腰で見学していました。
木造の板の隙間から見える階下が、めっちゃ怖い。怖すぎる。
板を踏み外したらどうしようと考えもして、怖さ倍増でした。
スタスタ階段を上る母の姿にも驚いたわ。

入口には守衛さんが居ます。
偶然、外に出ていらしたので見学できるか訊けてラッキーでした。


見えにくいですが、左下の表の行数が、文化財に指定されている数でもあります。


配置図はコチラ。

風呂場や炊事場がある建物の門。
こちらは上田市指定文化財です。

写真左側の手前の白い建物【旧常田館製糸場施設 撰繭場】
木造二階建、切妻造、鉄板葺
建築面積123.94㎡
重要文化財


写真では伝わらないと思いますが、デデンと建つ木造の高層建築物には圧倒されます。


左【旧常田館製糸場施設 三階繭倉庫】
木造三階建、東面切妻造、西面寄棟造、桟瓦葺、南面下屋附属、鉄板葺
建築面積170.81㎡
重要文化財

【旧常田館製糸場施設 五階繭倉庫】
木造五階建、寄棟造、桟瓦葺、南面下屋附属、鉄板葺
建築面積401.12㎡
重要文化財

【旧常田館製糸場施設 五階鉄筋繭倉庫】
鉄筋コンクリート造五階建、寄棟造、鉄板葺
建築面積131.33㎡
重要文化財


このコンクリート造五階建ての建物から見学スタート。

なんだか妙に惹かれた錠前。

小学校の頃に蚕をクラスで飼ってたなぁ。
ああいうのって今の小学生もやるのかしら?

注意書きの二行目がちょっとオカシイ。
迷いつつも階段を利用して二階へ。


かなりバリアフルな階段です。
右側が怖いので左の手すりを持ちつつ上がるワタクシ。


コンクリートの階段の有難みをこの後痛感することになりました。

三階へ向かう階段は閉じられています。




上階に居る時に閉じられたくないなぁと空想してみたり。

初めて見ましたわ、猫瓦って。
蚕と繭をねずみが食べるため、
養蚕家がねずみよけにネズミを駆除するための呪具として
猫をあしらったものを用いていたんだとか。

コンクリート造の建物から木製の通路を通じて三階繭倉庫に移動します。


板は一枚で隙間から地面が見えます。
歩く度にギシギシ鳴る床が怖い。


既にここからへっぴり腰のワタクシ。


写真では何故か分かり難くなるのだけれど、
結構下が見えているんですよ。
ヒーッ!


しかし、ここもまだまだ序の口でした。


木の床板は厚み1.5cmぐらいかと思われます。


枯山水みたいな模様が。
凄く丁寧に手入れされているんですね。

改めて「夜分」と「夜間」の違いに悩んだワタクシです。

三階繭倉庫の前を通過して、五階繭倉庫へ向かいます。


三階繭倉庫は明治36年に完成。

全ての建物の外壁が綺麗なので、最近塗りなおしたのかもしれませんね。

ここで二階の高さがあります。

柱には様々な説明書きが付いていました。


上の説明にある煙突が、左のそれです。

立派な鏝絵が額装されていました。



ちょっと先に見える、天井部分に注目。
うだつの様な壁が見えます。
その辺りが五階繭倉庫の入口。

その前に、こんな説明書きもありました。


これが使い道が変化して塗りこめられた窓。

こんな説明書きもありました。


壁に沿ってあるのが「せみ竿」。
初め手すりかと思った。


固定の縄の締め方も技があるんでしょうね。

これが滑車である「せみ」。

足元にあったブロック。
なんかオシャレ感があるわ。

エレベーターもあるんですね。

階段が木製で、しかも急勾配。
手すりはありません。
昔の女工さんって凄いなぁ。


天井を見ると、それが上階の床であることが分かります。


二階から入ったから、ここは三階か?

柱が細いことに驚きます。
鉄筋コンクリート造のマンションに慣れると、こういう構造が怖くて仕方ない。
(重量的に)


分かり易く「穴」と書かれた部分。
ここから繭を搬出していたようです。

窓枠に貼られた新聞を見ると、昭和の情報でした。
宮澤喜一が外務大臣の頃のものっぽい?


壁の構造が見られる箇所もありました。

歩くと床がギイギイ鳴るもんで、奥まで怖くて行けませんでした。

窓から階下を見降ろしてみる。
網があれば高所でも大丈夫なワタクシです。

外から見た三階繭倉庫。
石垣もお城のような外観に拍車をかけています。

五階繭倉庫の出入口。
三階繭倉庫との境にある天井部分の壁は延焼防止のためですかね。

左手が事務所棟。右手に門があります。

道順の最後は緩やかなスロープ。
しかも地面に付いているので高所恐怖症でも安心できます。

左手が五階鉄筋繭倉庫、右手が三階繭倉庫(木造)です。


石垣の土台が綺麗ですね。
そして白漆喰の壁が青空に映える映える。

右手が守衛室。
門の向こうには事務所兼住宅が見えます。

【旧常田館製糸場施設 事務所兼住宅】
木造二階建、寄棟造、桟瓦葺
建築面積163.78㎡
重要文化財


この奥に住宅棟があります。


今気付いたのだけれど、ここも内部見学が出来たんじゃなかろうか・・・?

【旧常田館製糸場施設 四階繭倉庫】
木造四階建、寄棟造、桟瓦葺、建築面積239.60㎡
この高さなのに木造でだってところがスゴイですね。


周囲は駐車場になっているので、休日は一階部分からすっきりと見学できます。
たぶんここは外観のみの見学。


漆喰塗りの外壁が、まるで城のようです。
何だかんだ言いつつも、この日、ここの見学が一番楽しかった気がします。
木造のアトラクションを楽しんだ気分だったと言えば、
重要文化財に申し訳ないですけど。
でも一見の価値ありだと思います。
養蚕業が盛んだった時代の建造物が関東には多い気がしますが、
その中でも木造五階建ての建物は特異なものに見えました。
まだまだワタクシの知らない建築物が日本には沢山あるなぁ。
そしてそれらを一つでも多く見ておきたいと思っている今のワタクシです。

【旧常田館製糸場施設(キュウトキダカンセイシジョウシセツ)】
長野県上田市常田一丁目
JR上田駅から徒歩5分
開館時間 10:00~16:00
休館日:12月~3月中旬までの土・日・祝