
矢中龍次郎が出身地であるつくば市北条に建てた邸宅で、
長らく無人だったものを現在の所有者が譲り受け、
NPO法人として管理・公開している国登録有形文化財です。
セメント防水剤「マノール」は業界では有名な資材で、
旧油脂化工社・現マノールで販売されてます。
そしてその「マノール」がこの邸宅でも使用されております。
様々な建築に関するコダワリが見られる邸宅で、
じっくり一人で見学したいなぁと強く思ったワタクシです。
(この日は饒舌な家族とご一緒させて頂いたもんで)
時間が決まったツアーしかない一般の見学ではなく、
活動に参加して、じっくり見てみたいなぁ。

公開日は門が開いて看板が出ています。


看板もいろいろ掛かっている。


本当に森のようです。
通りから建物が見えないし。


塀があるけど中途半端で不思議です。


右手には防空壕っぽいものもある。
※防空壕じゃなかったらごめんなさい

今の時代的にはバリアフルな玄関。


階段は大谷石。

玄関の外灯はシンプルです。

二重窓・・・ではなく「五層窓」と言うらしいもの。

玄関床はタイル張り。
緻密に貼られているため目地が見えません。

格天井の玄関ホール。


これはオリジナルの照明器具かな。

玄関ホールにはマノール各種が展示されています。
床は欅。


この邸宅の外壁が黄色いのは矢中氏が開発した色を使っているからなんですって。

応接間に向かう開口部にある杉戸には繊細で色彩豊かな絵が描かれています。
南部春邦作


上の杉戸の裏側の絵。

五層窓という窓らしいのですが、
どう数えて五層なのかは今のワタクシには不明。

見やすいところに時計を掛けましたねぇ。
コチコチ鳴る振り子の音がなんだか懐かしいです。
by昭和時代生まれ・育ち


今の欄間はシンプル且つモダン。


今には昭和時代の家電がずらりと並んでいます。
めっちゃ懐かしいテレビもあった。

居間の仏壇側。
中央が仏壇が入る場所です。


実は襖絵には生き物が隠されているんだそうです。
右上の蟹は分かるが、その他がイマイチワカラン。

応接間と四畳間を仕切る板戸には猿が描かれてます。
なぜ猿なんだろう?


板戸の引手はとてもシンプル。


猿の裏は秋の景色ですね。


[応接間]


・・・ってよりは、書斎ですね。
昭和時代に応接間を飾ったレースが掛けられています。
ああ、昭和って感じィ~

応接間の天井にも工夫があります。
ちょっとでも天井が高く見えるように枠を白く塗っています。


応接間と座敷の間の欄間は組子細工。


襖の引手より、襖紙がオシャレです。
いいなぁ、この紙。

[座敷]
床柱は杢目。
(希少価値のある模様です)


周囲の襖絵が紅葉なのですが、床柱も紅葉なんですってー。


引手に緑青がわいてますな。
オリジナルなんだろうな。


ちなみに特筆すべきは襖絵。
盛り上がった描き方で必見です。

縁側には弁柄が塗られているのかな。


どう見ても規格があっていないランプシェード。
オリジナルは割れたのかも?

縁側から見る庭。
銘石が山の形を作っています。

表玄関右手にある六畳間のドアノブ。
ネジが取れていますね。
ガラスは昭和時代の模様入りガラス。


玄関ホールには小さなピアノも展示してありました。



玄関ホールから、内玄関に向かう廊下を仕切るドアのドアノブ。
これ、めっちゃイイなぁ。
(螺子、めっちゃ取れてるけど)


[女中室]
内玄関横にあります。

別館に続く長い廊下。


廊下の天井。


[内玄関]
手前の火鉢は寄付されたものを置いているそうで、オリジナルではありません。


襖の引手は竹の意匠かな。

[台所]


左手には簡易の竈があります。


シンクはタイル張り。


右手には木製の冷蔵庫もあります。


[炊事場]
台所を降りると広い空間があります。
壁面は大谷石ですね。

廊下側から見た洗面室の天井部分。


[洗面室]


ザ・昭和って感じですね。


洗面室の天井は網代組み。

廊下から縁側を望む。




別館側から廊下を見返ったところ。

本館と別館の間にはちょっとした空間があります。


手前側が別館玄関。


凄まじい超絶技巧の左官・漆喰仕上げの天井。
めちゃくちゃ綺麗です。


[別館玄関]
既にここからして贅沢の匂いがしますな。
お金掛かってる感じ。
それもそのはず、皇室などの上流階級の人を迎えるための空間だそうです。


面取りされている土壁。
めちゃくちゃ綺麗!

右手がお手洗い。
右手の階段は総欅造り。


お手洗いは腰壁までタイル張り。

何度の引き戸は中華風の意匠。

玄関ホールの窓を飾るカーテンはオリジナル。

[食堂]
14畳の広さがあります。
上部の小壁部分には当時の国立公園の景色がぐるりと描かれています。


板戸絵は南部春邦作。
今も色鮮やかな色彩を保っています。


美術館にありそうな絵ですね。


板戸の引手も凝った造り。

桜の天板がゴージャスな戸棚。
長い一枚板です。


端に置かれていたのは照明器具のシェード。
これは何処を飾っていたものなんだろう?

四方にある通気口と照明。


中央の通気口はかなり豪華で・・・


網戸の部分が青海波っぽくなっています。

二階へ上がる階段。
古いので一気に大人数が上がれず、
一人が踊り場まで到達したら次の人が上がっていくシステムに今はなっています。

[2階応接間]
家具の足は畳を傷つけないように橇の様になっています。


壁側には写真が2枚飾られています。
近付いて見てみると・・・


昭和の天然陛下と皇后陛下でした。

その下にはマントルピースと東芝製の電気ストーブがあります。
当時、電気ストーブはかなり高価だったんだそうな。

襖の引手。
襖紙に合った意匠ですね。

応接間は格式の高い筬欄間。
枠は漆塗りです。


天井は格天井。


この部屋の格式が高い証拠に、長押の納まりは「枕捌き(巻裏捌き)」になっています。

[奥の応接間]
床柱は四方正目。


書院は組子細工。

天袋・地袋の引手はかなり豪華。

階段前の3畳間の襖を飾る引手。

応接間の開口部も二重・・・五層窓になっています。
タッセルがあるってことは、カーテンが掛かっていたってことですね。

2階五畳間の照明器具。
たぶんオリジナルなんじゃないかなぁ。


畳間に飾られていた額。
いかにも昭和時代って感じです。

五畳間はガラス窓が多く、とても明るい部屋となっています。
先の竜巻被害で窓の一枚が飛ばされてガラスが割れたそうです。
窓は真新しい木で作りなおされていました。




この陸屋根にマノールが使われています。

戻って1階の庭。銘石だらけで、庭が見学できるならじっくり見たいなぁと思いました。
残念です。


中央にある赤い石は佐渡の赤石ですね。
これからの季節、紅葉が期待できますが、
邸内のイメージは今とはまた違った風情が楽しめるんだそうです。
ちょっと通おうかなぁ。

邸内にある照明器具は長らくの空き家状態の内に欠損したりしているのかもな。
と想像しているところです。

【矢中の杜(旧矢中邸)】
茨城県つくば市北条94-1
通常見学日:土曜
見学時間:11:00〜、13:00〜、15:00〜(ガイド付き)
各回所要1時間程度
邸宅維持修繕協力金:500円
TXつくば駅⇒

「筑波交流センター」下車徒歩15分
http://www.yanakanomori.org/