
『宮本家住宅店蔵ほか7棟』は平成15年に指定された国の文化財です。
醤油の醸造・販売を行っていた老舗で、土蔵造商家建築が特徴。
北条に来る前に下調べをしていたのですが、
ここが個人の管理であるため、見学は不定だと理解していました。
でも観たい。
そう強く願っていたら、希望が叶いました。
「見学ができる日だと北条ふれあい館で聞いて来たんですけど、可能でしょうか」
と云いつつ引き戸を開けたら、奥様がとても丁寧に案内をして下さいました。
ここまで丁寧にご案内頂き、
対価を支払わないでいいことで罪悪感に苛まれ、
帰りに北条ふれあい館で
「見学料は本当に要らなかったんですか?」
と確認しちゃうほどに。
もう、ほぼ取材って感じでした。
国の文化財なのに、とても気軽に写真を撮らせて頂き、
また色々と気さくに話をして頂き、
記憶に残る時間を過ごすことが出来ました。
次回北条に行く時は、
何か手土産を持って行かねばと思っているところです。

幕末の建物もあるようです。
右図面の右下空き地は以前に醤油蔵があった場所だそうです。


奥は居住空間みたい。

今のシャッターみたいな役割を担う「揚戸(あげど)」。


これを降ろすと小さな出入り口が現れます。


かなり重い戸ですが、金具で止まっているだけ。


降ろして(降ろさせて)頂きました。
こんなに気軽に文化財に触ったのは初めてだわ。
途中で止まっているのは
東日本大震災でちょっとズレたかららしい。


基礎の部分と柱が若干ずれていますね。
ここから見て左右に揺れたってことかな。

醤油製造以外にも様々な商いを手掛けていたそうです。
荒物屋は分家したところで営んでいるらしい。

一度入れた現金が取り出せないようになっている「現金回収箱」。
左側は貨幣のみの時代のものらしく、奥様が箱を持ち上げると・・・


「元禄」の文字がありました!
(忠臣蔵の時代だよ)

店蔵の一階に展示されている品々。


左端にあるのは今も使用可能なアメリカ製のレジスター。
レシートの印字も出来たんですって。


奥様が手に持っているのが、レシート用の紙です。


レジの説明書なども見せて頂きました。
値段が書いてある。


下が日本語訳の取扱説明書で、右が英語で書かれている原本。


この時代の領収書もありました。
昔の切符みたいに、固い紙です。


このレジスターの主な使用商店一覧もありました。
今も残る有名デパートや、銀座の老舗が数店名を連ねていますね。

奥様が持っている写真が昔の蔵の写真なんですって。
今と殆ど変っていません。


今も動く鉄製の扇風機。
(日立製)
くび降りする高性能な扇風機です。
持たせて頂きましたが、持ち上げられないほど重いです。


これは電気ヒーターなんですって。

奥様のおばあさまのお嫁入り道具。
銅鏡です。
こちらも持たせて頂きましたが、
これって、博物館で見るようなものだよね。
触って大丈夫かいなと恐縮しつつも、二度とない機会なのでお言葉に甘えました。

「これが何か分かりますか?」と奥様。
「火熨斗ですよね」と即答出来たのは夢のおかげです。


「古いものがお好きなら、こういうものもありますよ」
と言って奥から取り出してきてくださったのは書物。
おばあさまのお嫁入り道具だそうです。


とても保存状態が良くて、この日一番記憶に残ったほど興味深い書物でした。
(ものごっつい興奮してしまったワタクシです)


作りがもの凄く丁寧で、綺麗。
書物が美術品として取り扱われる理由を理解しました。


妻となる婦人の心得や、基礎知識などが五巻の書物につづられています。


先の皇后さまのお言葉もありました。
(ラストの“やまとなでしこ”だけは判読できる)


侯爵鍋島直大の夫人・鍋島榮子の言葉もあります。


中をちょっと拝読。
今でも十分使える内容で、再販して欲しいなぁと思いました。
贅沢な紙なので、これと同等品だとかなり高価で手に入れられないでしょうが・・・。

一時期、郵便局もしていたそうです。
この木札が窓口の看板。


なんだか異様にカッコイイ看板ですよね。

ご厚意で蔵も見せて頂くことに。店蔵の奥の居住空間を一部通って庭に出ました。


ちょっと店蔵の話に戻ると、ここも床は三和土です。


でも、店蔵の奥の三和土(たたき)の美しさは感動もの。
超絶技巧って感じの三和土でした。

右手に蔵が連なっています。


反対側から見ると、左手に連なるのが蔵。

元・米蔵だったものは「宮清大蔵コンサートホール」として活用されています。


中に入らせて頂きました。
蔵を筑波大学の教授と学生さんたちが改修してくれたんだそうです。


突き当りは新しく取り付けられた階段。
元の階段は急で危ないので使われていないそうです。


二階の床は一部取り外され、吹き抜けになっていました。


梁の部分に何かが結わえ付けてありますね。
これは神社などのお札なんだそうです。
(何年分あるんだろう?)


二階の吹き抜け部分を見降ろしたところ。
二階にも座席が用意されており、音がとてもよく聞こえるそうです。


蔵二階の窓も開けてみてくださいました。
すっごく重そうです。

樹齢400年とも言われる大欅。
周囲にあった他の欅は道などに葉が落ちるので伐採され、
敷地内の中央に葉が落ちるこの樹のみが残されたそうです。


洞は根元まで続いているそうで、
どんどん高い場所に穴が上がっているところから、
成長度合いが判別できるんだとか。

【宮本家住宅門】
登録有形文化財(建造物)
木造、瓦葺、間口2.4m、塀付



店蔵の東方に建ち,両者の間に塀を設けて,屋敷正面の構えを整えている。
1間1戸薬医門形式の門で1軒疎垂木、切妻造、桟瓦葺の屋根を架ける。
真壁造、漆喰塗の塀は腰を簓子下見板張とし、
桟瓦葺の小屋根を腕木形式で受けている。


一時期車庫にしていたそうで、傾斜をつけたために門扉の下を削ったそうです。


扉を開けて見せてくださいました。
開けっ放しにしておくと、道だと勘違いした人が敷地内に迷い込むそうで、
普段は締め切りにしているようです。

先々代の頃にこの辺りで大火があったそうで、
その時に門の一部が燃えたそうです。
しかしこの門のおかげで内部への延焼が防がれたのだとか。

右手が【宮本家住宅新蔵】
登録有形文化財(建造物) 土蔵造2階建、瓦葺



西を正面とする東西棟の切妻造、妻入、桟瓦葺で、木造2階建。
外壁は漆喰塗で、南に連続して建つ大蔵と庇を共有する。


現在コンサート会場として利用されている米蔵の内部にあった物を
ここに移動して収蔵しているそうです。


門の瓦と新蔵の屋根。

新蔵の屋根と外壁も改修されていました。

塀の屋根瓦は昔のままっぽい。

看板犬のシロちゃん。
秋田犬だそうです。
大きいけれど、めちゃくちゃ可愛い!
秋田犬が欲しくなるほど可愛いです。
毛がもふもふしてるし。


いいなぁ秋田犬。
将来、田舎暮らしをするなら飼いたい。

店蔵も屋根が改修されているようですね。


間口が広いのに、鰻の寝床のように奥も深い敷地となっております。


この石は稲田石だったりして?
実は奥様がこの建物で育った方で、
子供の頃の話もいろいろ伺いました。
気さくな方で、お話も面白く、とにかく楽しかったです。
維持費が大変なはずなのに、見学料を取らないところが凄過ぎる。
これが、ノブリスオブリージュ(仏: noblesse oblige)ってやつなのか?
いずれはこういう見学もできなくなるのかもしれないと思い、
撮らせて頂けるもの(確認済)は遠慮せず撮らせて頂きました。
こういう、国指定の文化財もあるんだなぁ。
上手く言葉にできないけれど、
とにかく凄い御家族だと思いました。
11月の蔵でのコンサートには是非行こうと思ってます!

【宮本家住宅】(国登録有形文化財)
茨城県つくば市北条188
開館日は個人住宅のため不定
