アイシン精機が所有し、名古屋市が土地・建物を無償で借用して公開しているのが、
「旧豊田佐助邸」。
建築年は大正12年(1923)で、町並み保存地区の伝統的建造物に指定されています。
この邸宅の主は、トヨタグループ創始者・豊田佐吉の弟・佐助です。
佐吉は末っ子で、豊田発展において経営の才を生かした人物と言われています。
[洋館のエントランス]
白い、総タイル張りです。
(どんだけお金持ちやねん)
玄関の床もタイル張り。
天井も壁も白漆喰塗りです。
(すっごく綺麗)
※隅の換気口に注目!
左手が応接室です。
廊下の壁の帽子・コート掛けのフック数からしても客人は多そうですね。
廊下奥・正面の壁の先には部屋があったそうですが、今は解体されて現存していません。
[応接室]
天井は白漆喰。写真にはありませんが右手に大きな絵が掛かっています。
アカンサスの意匠の吊元の漆喰装飾。
鶴にトヨタの文字をデザインした換気口。
絵が置かれた台は、洋間とは思えない和風の地袋。
ものすごくユルイ絵が描かれています。
ここだけ違和感のある和洋折衷具合ですね。
奥の廊下の壁にある照明スイッチ。
その上にある分電盤。
こんなところに当時は高価であったろうガラスが使われているってことは、
電気がステータスだったってことでしょうか。
可動式らしい廊下の照明。
このアイデアは初めて見たわ。
洋間から隣の和館に続く廊下の壁と天井も漆喰塗り。
ガラス戸の向こう側が和の空間になっています。
和室は合計4室。田の字型に配置されています。
[1階和室]
ワタクシは初めて見るタイプの書院造りでした。
落とし掛けも床框も途中までしかないし。
書院には地袋が付いていて、とても実用的な感じ。
(開閉式かな)
地袋の引手は蝶の意匠でした。
右側にある地袋はきらびやかな金彩。
その地袋の引手の意匠は鳳凰と蝶かな?
襖の引手は蝶の意匠。
どこの襖の引手かは忘れましたが、とぼけた感じの鶴が描かれていました。
これもどこの引手だったのかを忘れましたが、よく見ると地模様が蔦柄の卍っぽい。
[半床仏間]
別の和室の襖は開け放たれ、内部が見られるようになっていました。
筋交いが見えるけれど、襖より高い部分のこの空間は何だろう?
この和室は、正面右手の(先ほどの)書院造の和室の対角にあります。
観音開きの押入れには布が貼られています。
摘みは洋風の意匠っぽい。
布は何の模様なんだろう?
壁には古いガス管があります。
[仏間]
立派なお仏壇だったのですが、撮影は控えさせて頂きました。
しかし、お仏壇の土台にある框は撮っておきました。
綺麗な銘木だなぁと思って。
お高いんでしょうねぇ。
和室4部屋を囲むように廊下が廻されています。
庭の敷石がちょっと不思議な配置。
この苔っぷりから見ると、水鉢が置かれていたのかな?
和館裏にある土蔵。
黒漆喰塗り。
水回りが集まっているっぽい西側の廊下。
南側よりも細くなっています。
今では珍しい結霜(けっそう)ガラスだから、ここは昔のままっぽい。
水洗トイレだ!
しかも低い位置に手洗い器も付いている。
当時はかなり珍しいものだったんじゃないかな。
トイレの天井は格天井になっています。
贅沢ぅ~。
小便器の周囲はタイル張り。
衛生的ですね。
和館側の階段を使って2階に向かいます。
階段幅は普通。
和館2階の廊下。
右側に手洗いがあります。
ここも1階と同じく結霜ガラスを使用。
トイレはタイル張りです。
2階にもトイレがあったとは、当時としては画期的だったでしょうねぇ。
(下水管はどうなっているんだろう?)
左側は手洗いですが、なぜ腰の低い内扉があるんだろう?
いろいろワタクシには不明なことだらけでした。
北側の廊下にでっかい蜂がおりました。
体長4cmぐらいあったので、さすがのワタクシもビビって通れませんでした。
黒漆喰塗りの土蔵は、2階からだと全景が見えます。
この土蔵の右側に、かつては建物が続いていたそうです。
防災の観点から取り壊されたとかなんとか。
土蔵の上の鬼瓦。
丸に木瓜の紋が入っています。
2階の和室は、和館上に田の字型に4間、洋館の上に2間あります。
その周囲に廊下が巡らせてあります。
とてもモダンな障子欄間のデザイン。
引違いっぽいので、通風と採光を目的としているようです。
数奇屋造りの床の間。
床柱は磨き丸太。
ここにも「丸に木瓜」の紋が見られます。
書院の障子もモダンなデザイン。
ちん潜りは大きめで、光が奥まで届く工夫がされています。
欄間は透かし彫り欄間。
襖絵は金砂子っぽい。
地袋には布が貼られています。枠は漆塗り。
地袋の引手。
天袋の引手。
全ての部屋の襖がキラキラしています。
建設当初は眩かったでしょうね。
欄間の隣の天袋は観音開き。
下から見上げてみましたが、奥行きはそれほど無さそうです。
どこぞの襖の引手。
釘の位置からすると、ちょっとずらして付けるのがデフォルトなのかな。
どこぞの襖の引手。
地袋だったかもしれん。
意匠は蓮の葉でしょうか?
パネルが貼られている部屋もあり、周囲に住んでいた人々についても説明があります。
(建物を見るのに忙しくてスルーしちゃった)
この部屋の襖の引手。
模様は対になっています。
鶴の意匠の引手。
壁の下方には和紙が貼ってあります。
土壁の保護目的で貼られているのをよく見ますね。
我が家の昔の家も土壁でしたが、
掃除機をガンガン当てるもんで、ボロボロ崩れてましたわ。
今思えば、和紙で補強すればよかったんですねぇ。
この時代の建物には違和感のある扇風機が天井に備え付けられています。
日立製らしい。
和館上の4部屋すべてに備え付けられていました。
今で言う、シーリングファンですかな。
名古屋は盆地ゆえ、夏はめっちゃ暑いんだそうな。
・・・ってタクシーの運転手さんが言ってた。
洋館の2階部分にあたる和室は2間。
周囲に廊下が巡らされています。
(左側が階段)
[無双格子]
波打っているのは初めてみました。
なんだか余計に涼しそうに感じますね。
和館と洋館を繋ぐ2階の小階段。
当たり前ですが、洋館の2階の方が床が高くなっています。
で、その間を塞ぐ扉も設置されていました。
扉も凝っている。
洋館2階の和室は2間。
[洋館2階の和室]
襖絵が異様に豪華です。
鶴の意匠も見えるし。
ただし、劣化も激しい。
襖の引手にも鶴が。
隣の間にある「釣床」。
見上げるとこうなっているんですねぇ。
釣床下の壁にあるスイッチとコンセント。
平成の子供は知らないであろう「ナショナル」のマークがあります。
その下の床にはガス管もある。
2階にガスストーブがあったのかな。
洋間2階の廊下。
和室の前に洋風の廊下があるの不思議。
カーテンレールのボックスは和風です。
廊下の換気口にも鶴とトヨタの意匠が。
引上げ窓の枠は木製です。
窓を引き上げるケーブル?
洋風の廊下が和室の周囲を巡ります。
廊下と和室を仕切る欄間にはガラスが填め込まれていました。
ただし、引違いなので、開閉はできるらしい。
洋館2階から南側の庭。
洋館の北側の壁は板張りなんですね。
屋根のおさまり部分の瓦の色が2色になっているところにコダワッテル感があります。
廊下の天井部分。
ベンガラが塗られているのかも。
洋館側の階段。
壁は白漆喰です。
手すりもある。
1階から階段を見上げてみる。けっこう幅広い。
洋館にある勝手口。
家人はこちらから出入りしていたんでしょうね。
外灯のつけ方が面白い。
これだと消し忘れ(付け忘れ)はし難いでしょうね。
いいアイデアだ。
今はボランティアの方々の出入り口になっているみたいです。
高低差がかなりあり、結構バリアフル。
曜日によってはボランティアガイドが付くそうです。
こんなに立派なのに、入館は無料。
すごいな、管理者。
次回訪れることがあれば、今回疑問に思ったことを
ボランティアガイドの方に訊いてみようかな。
【旧豊田佐助邸】
愛知県名古屋市東区主税町3-8
開館時間 10:00~15:30
休館日:月曜