平成8年2月26日に宇都宮市に寄贈された「旧篠原家住宅」。
戦時中の空爆による火災で消失した建築物の中で残った、数少ない文化遺産です。
昭和42年ごろに西側の白沢街道の拡張により約7m程「曳き家」をしたため、
庭が半分以下、蔵と蔵との間も狭くなってしまっているそうです。

篠原家は江戸時代末期より醤油醸造業を営み、
明治期に入ると肥料業、太平洋戦争後には倉庫業などを営んだ
宇都宮有数の豪商だそうです。
入館料:100円


特徴のある外構で、大谷石と来る漆喰の模様が優美です。


[鬼板]
漆喰による影盛り(かげもり)が施されています。


[軒丸瓦(のきまるがわら)]
「サ」の家印(いえじるし)が施されています。

[主屋(重要文化財)]
いたるところにケヤキが使われています。


[東廊下]
5間(約9m)あります。床はケヤキ。


[金属製の雨戸]

[仏間]

[六畳間の金庫]
襖の先には階段があります。

[階段箪笥]
壁は「鼠漆喰(ねずしっくい)」。

[2階座敷(大広間)]
天井は桧の一枚板。


[床の間(間口二間半)]
ケヤキの一枚板。
「床の間」に合わせて二間半の畳が敷かれています。


[床柱は一階から伸びるケヤキの大黒柱]
棟木まで達しているそうです。

[廊下]
床板はヒノキ。


[ガラス戸]
昭和初期に追加されたもの。

昔、我家にもこんなガラス戸が填まっていて、
紙を置いて上から鉛筆で擦り、絵が浮き出てくるのを楽しんだなぁ・・・

[十畳間のふとん箪笥(桐)]


ふとん箪笥の中には枕が入っていました。

[客間]


左下の地袋のに描かれているのは狩野派の画家「菊池愛山」の鯉。

[階段箪笥を上から見下ろしたところ]
軋まないので異様な安定感が齎す安心感がある階段です。

[照明器具]
昭和初期に取り付けられたもの。


箱根富士屋ホテル本館客室にも同様のものがあるそうな。

よく見ると細工が凝っている襖の引き手。



襖は芭蕉布(ばしょうふ・植物の芭蕉の繊維で織り上げた布)を用いたもの。




[大広間の地袋の引き手]
小さいのに凝った細工です。

[蔵]

[文庫蔵 入口]
土蔵造2階建。
生活用具、衣類、書画・骨董などの美術品、古書などを保管。


[文庫蔵 1階]


[文庫蔵 2階]



[石蔵(右側)]
醤油醸造に使用した道具等を保管。



新蔵(重要文化財)]
土蔵造2階建、切妻造、桟瓦葺。

珍しい黒漆喰塗り(墨が練り込んである漆喰)壁。



この金具は蔵を修繕する際に足場を固定するためのものなんだとか。


でも、どうやって足場を組むんだろう?


[蔵に置かれた 蔵の構造模型]
幾重にも塗り重ねられた土壁の上に大谷石の板が張られ、隙間を漆喰で埋めます。


大谷石の板を止める釘を隠す為に漆喰が塗られているんですね。
JR宇都宮駅からすぐの場所にあるので、
乗り継ぎに時間が余った時にぶらりと見学に行くのも良いですね。
個人的には、見応えのある建築物でした。
平成に入ってからも実際に住まわれていたそうですが、
冬はとても寒いんだそうな。
さもありなん。
照明も控えめだし、住み続けるのは維持費も含めて大変でしょうね。
文化財として一般に開放されるようになったのは、個人的には有り難いです。
今はここに使われているような資材はなかなか手に入らないもんな。
100円払ってでも是非見て欲しい。
そんな施設でした。