
利根川に接する茨城県猿島郡境町。
日光東往還(にっこうひがしおうかん)の船着き場と宿場の役割をもつ
利根川水運の重要拠点として栄えた境河岸(さかいがし)が江戸から明治まで存在していました。
「船着き場より北に延びる街道沿いには河岸問屋・仲買・問屋・商店が並び、旅籠屋・茶屋・蕎麦屋・居酒屋なども商っていた」
とのことですが、街なかを自転車で走ってもその名残はあまり感じられませんでした。
さて、利根川の堤防そばにポツンとお店があります。それが『荒井川魚店』。
川魚を専門に扱うお店で現在の店主さんで三代目だそうです。
その店主さんも結構高齢で、お店もひっそりと営業している気配がありました。
店内が暗くて営業しているのか分からないのですが、
「ザッコ煮あります」という謎ワードが気になったので
質問がてら引き戸を開けてみました。

店内はやっぱり暗くて、昭和で時間が止まっている感じ。
店主さんと奥さんが別々の席で何かをしていたのですが、
入店した途端に二人が顔をあげたので
「伺いたいのですが、張り紙のザッコ煮って何ですか?」
とドストレートに質問してみました。
奥さんが立ち上がって入口のカウンターまでやって来て
カウンターの上に置いてあった大きな発泡スチロール容器から何かを取り出しました。
『これがザッコ煮よ』
と開けて見せてくれたのですが、くぎ煮のような佃煮でした。

ざっこ煮 1,100円(税込)
小さな鮒みたいな見た目の小魚が入っているので
「これは何という魚ですか?」とまたまた質問。
『モロコ。それ以外の魚も入っているので " ざっこ " と言うの』
という説明を独特のイントネーションの茨城弁で教えてくれました。
あれは茨城弁か? と気になったので調べてみたら、
猿島弁と呼ばれる茨城弁の一種らしいです。なんか納得。
「じゃあ、ひとつください」と買い求めたら、
『頭から全部食べられるからね。うちが作っているから美味しいのよ』
と、二、三回言われました。
あとでホームページを見たらこちらの商品は10~5月中旬限定の取り扱いでした。
買えてラッキーだったのかも?
ちなみに鰻も激推しされましたが、予約が必要だと口にして居られたような?
店内で飲食できる雰囲気ではなかったのでテイクアウトなのかな?
謎が盛沢山でとても気になるお店です。
奥さんとの会話も、どこか癖になる楽しさがありました。
帰宅後一匹摘まんでみましたが、とても柔らかくて魚の存在感がある逸品です。
白米で食べたら美味しいだろうなぁ。
この類の佃煮でこの価格は破格値なのではなかろうか?
たった数分のやり取りでしたが、過去の街道を利用する旅人の気分が味わえました。
町は大正・昭和・平成・令和の様相だけれど、
人は境河岸(さかいがし)があった頃のDNAを引き継いでいる、
そんな印象を抱きました。
自動運転バスが斜向かいに停車するので、そういう旅をする人にオススメのお店です。

【荒井川魚店(あらいかわうおてん)】
茨城県猿島郡境町本船町1559
営業時間 8:30~19:00
定休日:火曜
http://araikawazakanaten.web.fc2.com/

